こんにちは! Dr ニーアです。

医者は『安定したサラリーマンである』と言われることが多く、医学部が人気である理由の一つになっています。

しかし、実情を理解した上で医学部を目指す人はあまり多くないかと思います。

そもそも、勤務医はサラリーマンなのでしょうか?その質問に明確に答えられる人も少ないかもしれません。

ここでは、医者(勤務医)の仕事はどんな位置づけであるかをお話したいと思います。

 サラリーマンは日本独自の表現

日本では会社員の別称として使用される『サラリーマン』という言葉は、日本以外ではほぼ使用されません。

世界的には仕事はその内容によって以下の2種類に分かれていることをご存知でしょうか?

一つが『マックジョブ』、そしてもう一つが『クリエイティブクラス』です。以下、それぞれの特徴をお話します。 

マックジョブ

これは1980年代にアメリカで生まれた言葉と考えられているのですが、某大手ファーストフード店にちなんだ呼称と言われています。

利点
・あるマニュアルに従って行えば、誰でも同じクオリティで達成可能
・特別な技能・資格を必要としない
・人間関係に悩まされにくい
・責任が少ない

欠点
・経験年数に関わらず、賃金は一定かつ、安い
・他の仕事に応用できないことが多い
・給料の多寡は労働時間の長さに依存

要するに、
『アルバイト募集、年齢・経験不問 時給850円~ 6時間以上の勤務、休日勤務が可能な方は時給950円~』
と募集されている仕事を想像してもらえればわかりやすいかもしれません。

クリエイティブクラス

特徴として、高度な知識、技能、資格保持者が多く、また、独創的かつ新しいものの創造や、他の人では同様に行うことが困難な業務内容となります。

利点
・雇用形態の自由度が大きい
・経験年数に関わらず、個人の技能・資格により高給となる
・労働時間と無関係に収入を得られることが多い

欠点
・特別な技能・資格を必要とする
・責任が大きい

しばしば、年収が高くなる傾向にあり、画一的なマニュアルも無いことが多いため、自分の能力や経験で仕事をこなす必要があります。

勤務医はクリエイティブクラスなのか?

医師免許は国家資格で仕事内容も高度な専門性があるため、一見、クリエイティブクラスに位置するように見えますが、実は『日本の勤務医』においてはそうとは言えません。海外と日本の勤務医は大きな違いがあるのです。

最近の医学雑誌には、海外留学や海外勤務経験のある人の体験談が掲載されている事が多いのですが、日本の勤務医と海外、特に欧米の勤務医は全く異なる勤務形態です。

欧米の勤務医

基本的に病院の看板を借りた自営業者という扱いです。病院との契約により働き方が厳密に決まっています。朝決まった時間~夜の決まった時間まで固定で働きます。医者は自営業扱いですから、病院との関係はビジネス要素が強く、契約のみの関係で、病院への帰属意識はありません。患者は医者を選び、診療を受け、その報酬を医者に支払います。その取り分の中から病院が一部、看板を貸しているという名目で徴収します。

日本の勤務医

基本的に医局に所属し、医局の指示のもと、病院を転勤させられます。勤務医で病院との雇用契約内容に精通している人は殆どいないような曖昧な雇用契約で働いています。また、勤務先の病院や自分の科への帰属意識を求められます。さらには、勤務時間も長く、深夜や休みの日で頻繁に呼び出しがかかるなど、プライベートと仕事の時間の境界があいまいです。

日本の勤務医の雇用形態

このように、日本の勤務医は会社(医局・病院)に依存しており、現在雇用されている会社(病院)の言いなりである要素が強く、本社(医局)に睨まれると望まぬ転勤をさせられたり、昇進させてもらえなかったりと、まさに日本の会社と同じ文化が根付いています。一方で、医師免許を必要とし、日々仕事に追われ、多大な責任があります。

要するにマックジョブの長時間労働、安い時間単価が取り入れられた働き方でありながら、クリエイティブクラス並みの資格と個々の能力と責任を求められる職業であり、両者の悪いところ取りの職業という現実があるのです。

それでも勤務医という仕事に魅力が感じられるでしょうか?