こんにちは。 Dr ニーアです。

今回取り上げるテーマは若年者の自殺についてです。

世間がコロナウイルスの対応を迫られている中、一つのショッキングニュースが流れました。

俳優の三浦春馬さん(30)が18日、東京都港区の自宅マンションで首をつっているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されたことが、捜査関係者への取材で分かった。警視庁は状況から自殺とみている。
出典元:時事ドットコムニュース

今回この内容を取り上げるのは、日本に、そして医療界に大きなインパクトを持ち続けている大問題であることを改めて理解して頂きたい事と、また、この問題こそが、私が情報を発信し始めた原点となっているからです。

日本人の自殺率

2016年度の統計をWHO(世界保健機関)が公表していますが、日本の自殺率は世界第8位で、人口10万人中18.5人が自殺しています。

引用元 : Suicide in the world – WHO

また、近隣の国ではロシアや韓国における自殺率は日本より高いのですが、先進国で構成されるG-7の中ではフランスの10万人中17.7人を越えて第一位の自殺率になっており、所謂、先進国の中では自殺率が高い国と評されています。

これほどまでの高い自殺率には色々な要因がありますが、2019年に発表された日本人大学生のデータ解析によると『自殺を考えている人が全体の21%に達していた』と報告されています。

参考文献:Otsuka, H., Anamizu, S., Katsumata, Y., Enomoto, M., Fujiwara, S., Ito, R., Furukawa, M.,Sugioka, M., Takano, A., 2018. A basic survey on the experience of suicide ideation among Japanese students. Bull. Stud. Counsel. Cent. Univ. Tokyo 26, 7–15 in Japanese

医療界での自殺率

実は、自殺を試みる人は、経済的には問題が無く、むしろ、社会的に影響力がある方や社会的地位の高い方にも多いとされています。特にここ数年、インターネットやSNSによる個人攻撃の問題であったり、一方で、過酷な労働により個人の身体的、精神的健康が損なわれて自殺に繋がるケースも非常に目立っております。
前者はインフルエンサーと言われるような人や芸能人に多い一方で、後者は私たちのような医療者を含めた労働者に多く見られる傾向があります。

自殺がもたらす不利益

SNSやメディアの発達により、若年者の自殺がクローズアップされ、日常の中でも意識することが多くなったように思いますが、実際に過去から現在までを追っていくと、実は自殺率は年々低下しています。これは、頻孤立の改善や社会環境、教育現場における環境改善に一因があるとされます。しかし、OECDから以下のように報告されています。

うつ病関連自殺により日本は推定25.4億ドルの経済的損失をまねいている
引用元:Making Mental Health Count – The Social and Economic Costs of Neglecting Mental Health Care (Report). OECD. (2014-07). doi:10.1787/9789264208445-en.

若年者の死亡率の第一位は自殺が占めており、経済学の観点からは国家単位で非常に大きな人的資本を失い、それが経済的損失につながっているのです。

自殺を防ぐには

メディアや精神科の書籍にはできるだけ原因から逃げる事、支援してくれる味方や相談相手に頼る事などと言われます。しかし、勤務医として働いていると年に数回は自殺を試みて搬送されてくる方の診療にあたりますが、自殺の原因は非常に多様であり、解決策を一般化することは難しく感じています。

以前の記事でも述べましたが、私の同級生はすでに数人が心の問題で医者という仕事を続けられなくなったり、薬物の過量摂取による自殺未遂をおこしています。個人や周囲の人間の支援のみで解決できる問題ではなく、社会全体で本当に取り組まなければならない課題と言えます。SNSに対する社会としての介入、過労に対する制限は今後ますます強化されることは予想されますが、それに加え、精神的に追い詰められる前に悩みのマネージメントをできる教育をしていく必要があると感じています。