こんにちは!Dr ニーアです。
本日は医学部医学科6年間の学校生活及び過ごし方について、年次別にお話します。
1年次
6年間もあるのだから、医学において学ぶことが多いのであろうと思って入学してきた学生は肩透かしを食らう1年間になります。それが、ほぼ1年を通して勉強する一般教養です。場合によっては、一般教養が2年の科目に組み込まれる大学まで継続されます。一般教養とは、医学とは関係性の薄い、または関係性のない科目を網羅的に学ぶことです。大学ごとに特徴や教科の偏りはありますが、理系科目(物理、有機化学、数学)や、外国語(英語、ドイツ語など)などの医学と関係のありそうな分野から、大学のある地域の歴史や経済学、日本の歴史、哲学などの医学と関係の薄いであろう学問を学びます。
基本的には総合大学で全学部合同のキャンパス(本学)で授業が行われていますが、医学部は本学とは別の地域にある事が多く、そこまで通う必要があります。大学によっては本学と医学部が100km程度離れている地域もあり、1年間限定で本学の近くに住む人も多いようです。
2年次
2年次には、一部教養科目を残している大学もありますが、徐々に医学部らしい勉強が始まります。しかし、いきなり各科目、例えば外科とかの手技を学ぶのではなく、いわゆる『基礎医学』の勉強が始まります。この基礎医学が始まると1年次とのギャップが大きく感じられ、面食らう学生も多いです。ほとんどの大学はこの2年次に解剖学を行います。実際のご献体を解剖し、人体の構造を学ぶことになりますが、非医学部の学生との大きな違いといわれるのが、医学をいくら勉強しようとも、解剖実習があるのは医学部だけというところです。二度とない貴重な機会であり、実際医者になった後はもう一度解剖を勉強したいと思わされることが何度もあります。また、そのほかの教科として有機化学、組織学、生物学などの高校で習う内容の更に発展的な内容を学びます。高校の時に物理/生物/化学を選択する場合においては生物や化学を選択していたほうが有利とは思いますが、絶対的なものではなく、少し時間がかかる程度です。実際に覚える内容が多く、試験も頻回にあり、連日の勉強が必要となります。1年次に留年する人はわずかですが、2年次(と3年次)の留年者はかなり多くなります。
3年次
大学によりますが、『基礎医学』に加えて、『臨床医学』が始まります。基礎医学では、生化学、生理学、病理学などの、より医学に関連する学問が中心となり、臨床医学は臓器別での学習が中心となります。例えば、病院で良くある、耳鼻科、眼科、消化器内科、小児科、産婦人科などの各々の科でまとまった時間、その科のみに集中して学習し、試験を行うことを全ての科で繰り返していきます。大学によりますが、試験科目に癖のある科は大学によって異なり、殆ど過去問の出題のみとなる科もありますが、大学毎に癖のある科があり、毎年非常に難解な試験を出題し、何人も留年生を出す科もあります。
4年次
引き続き、『臨床医学』が中心となります。3年次に行わなかった科目を中心に学習するということを繰り返します。4年次は、5年次に病院実習に出るための共用試験に向けて座学が中心となる1年です。共用試験はCBT(Computer Based Testing)というパソコンを使用して受けるいわゆる筆記試験と、OSCE(Objective Structured Clinical Examination:通称、オスキー)と呼ばれる実技試験の2つが行われています。この共用試験制度が始まったときは、合格基準は厳しいものではありませんでしたが、現在の共用試験は、明確な合格基準が設定されており、合格基準に達しない場合は病院実習をするのに不適切と判断され、留年となります。尚、いずれも過去問や練習問題の教材があります。
5年次
病棟実習が中心となります。4年次に座学で学習した『臨床医学』をそれぞれの科を週単位で実習します。指導医に教えてもらいながらのみならず、実際に患者さんを担当、診察することもあります。私の時は、CBTやOSCEの点数によって実習班が決定され、学力が均等になるように班が決定されました。実習班は基本的に変更しないため、かつては予め絶対に一緒にできないような険悪な人同士は一緒の班にしない、としたところもあったようです。医学生は我が強い人が多いので、仲が悪くなる班もあるというのは本当の所です。実習と共に、医師国家試験に向けての勉強が始まります。
6年次
実習の継続と共に、6年間の集大成である医師国家試験合格を目指し、猛勉強します。医師国家試験についてはこちら。ひたすら勉強の日々なので、国試ノイローゼになる人もいました。医師国家試験の合格率は85~100%とかなり高いのですが、勉強してない人はかなりの確率で落ち、勉強した人でも数%は落ちますので、安心はできません。しかし、感覚的には大学受験の方が圧倒的に過酷なので、普通にやっていれば医師国家試験は普通に合格できます。
授業以外の過ごし方
大学が6年間あるというのは非常に長い時間ですが、コミュニティは狭いことが多いです。1年次は医学部以外の学生とも交流があることが多いのですが、キャンパスが離れ、それぞれの生活スタイルになると、必然的に人間関係も医学部の医学科や看護学科の人との付き合いが多くなります。医学部は医学部のみの部活に所属していることがほとんどで、運動部で他大学との交流戦や大会は医学部生同士の試合になります。それは、6年間という期間の違いと、勉強や試験日程に大きなズレがあるためです。
運動部に所属すると、部活の上下関係ができ、経験した人ならわかるかと思いますが、自分が1年生の時の5、6年生は雲の上の人みたいな存在であり、全く頭が上がりません。コミュニティが狭い分、学年を越えて過ごす期間が長く、人間関係も密になります。また、部活ごとに『試験の過去問』を代々受け継いでいて、融通してもらったり、割の良いアルバイトなどの紹介もしてもらえたりと、非常に良いことも多いです。一方で、体育会系の要素が強い部活も多く、授業が大変でも部活の練習は夜までしてそれが終わって勉強をしなければならなかったりと、非常に厳しいスケジュール管理を求められるという悪い点もあります。
部活動の所属に関わらず、アルバイトをする人も多いです。前述の割の良いアルバイトとして、医学部に合格したことを利用として家庭教師で高い時給をもらう人が多いです。本業が忙しくなると、家庭教師のアルバイトは後輩に委任する人もいますが、最後まで継続している人もいます。また、他の学部生と同様に、遊びに行ったり旅行をしたり、留学するなどの個々に有意義な時間を過ごします。
医学部は厳しいというイメージはあると思いますが、勉強ばかりでなく、6年間の時間を利用して色々な事に挑戦できる時間です。医学部を目指す人、医学部の1、2年生は医者になったら取り戻せない今だけの学生生活を意識して過ごしてほしいと思います。