こんにちは!Dr ニーアです。

本日は

医者の年収はどれだけあるのか?

についてお話します。

医者を目指している人も、医学部の学生も、はてさて同業の方もどれだけの年収が得られているかは気になるところではないでしょうか?

長文になりますが、お付き合いいただければと思います。

医者の勤務体系

医者を大きく2つに分けると

自営業である開業医

もしくは

被雇用者の勤務医

になります。

開業医の方では県での長者番付に入るような人もいるため、開業医まで含めると非常に幅が広くなります。年収数千万円以上や、場合によってはそれ以上になったり。。。

逆に、常に赤字続きで最終的に廃業してしまったりするなど、幅や変化が大きいです。

以上より、開業医と勤務医は別の枠組みでお話されることが一般的です。

私のような勤務医の割合の方が医者全体の中では大きいです。

さて、

医者になりたい人や医者に伝えたい!誰も教えてくれない本当の事!

の中で少し触れましたが、医者の現実的な側面に

『年収が高い』

というイメージをお持ちの方は多いと思います。

医者を目指すとき、現実的な面を気にするのは当たり前ですが、イメージが先行しすぎている側面もあるかもしれませんので、その理想と現実を知って頂ければと思います。

サラリーマンの平均年収

さて、世間一般のサラリーマンの年収からみていきましょう

ここでお示しするのは2017年の平均年収です。

1年を通じて勤務した給与所得者の年間の平均給与は432万円であり、前年に比べて2.5%増加した。男女別にみると、男性532万円、女性287万円
引用元:国税庁「民間給与実態統計調査」平成29年分民間給与実態統計調査結果

年収に関してはここ数年増加傾向のようですが、上記のようにサラリーマン全体の平均年収は432万円です。

ただし『平均』の年収は、ある特定の層が異常に高い、低いなどがあれば容易に全体の平均をゆがめますので、解釈には注意が必要です。

医者の年収

次に気になる医者の年収ですが、

H29年時点での勤務医師の平均年収は1696万円
            平均月収は106万円
開業医の平均年収は2,800万円~4,000万円程度

勤務医師の平均年収について詳しく解説します。|日本最大級の年収ポータルサイト「平均年収.jp」

このようにみると、やはり医者は高給取りということになります。しかし、それなら医者になれば本当にお金持ちになれると言えるのでしょうか。

確かに、平均年収は高いのですが、その解釈にはいくつか注意が必要です。

開業医の平均年収は幅が大きい

上でもお話しましたが、平均年収はある層の年収が異常に高い、低いなどによって全体の結果が歪められます。

県の長者番付に入るような人もいれば、採算が合わず、閉院せざるを得ないこともあります。

開業すれば全員が上記の収入を約束されるわけではありません。

ところで、全国的な傾向として開業医の子供の割合は私立の医学部の方が国立の医学部よりも大きいです。

理由の一つに学費が高額であるためです。

これを見ると、開業医は儲かりそうというイメージを持ちそうです。

しかし、実際は『儲かっている開業医の子供が私立の医学部に通える』というだけで、開業できていてもギリギリの生活の家庭はそんなことはできません。

いわゆるバイアスがかかっている状態であり、これが開業すれば皆儲かると錯覚に陥る原因の一つです。

勤務医の年収は市中病院と大学病院で大きく異なる

勤務医の年収ですが、大学病院に勤務するか、市中病院で勤務するかによって大きく異なります。

大学病院では10年目の医者でも月給が30万円程度しかない大学病院もあります。

市中病院では月給100万円以上というところも多いです。

ただし、医者にはいわゆる『バイト』があります。

詳しくは別の記事でお話しますが、勤務の中で、週1~2回、市中病院に1日のみの勤務や当直の応援として大学から派遣されて勤務します。

そのバイト代を総合すると大学病院の月給を越えることもあり、それらで大学病院における相対的に低い月給を補っている人が多いです。

勤務医の年収は経験年数と役職に左右される傾向にある

ここは通常のサラリーマンの方と変わらない点ですね。いきなり平均年収までの給料がもらえるわけではありません。

初任給(初期研修:医者1~2年目)はおよそサラリーマンの平均年収の80~120%くらいという市中病院が一般的でしょうか。

しかし、医者の経験年数によっていくつか劇的に上昇する年があります。

市中病院で後期研修(医者3~5年目)の年数になると

なんと

年収が初期研修の2倍以上!

に跳ね上がります。

私も3年目の給料は跳ね上がりました。

また、後期研修を終えて6年目以降に医員や医長、部長の役職がつくとそれぞれ段階的に年収が上がります。

ここまで聞くと、市中病院で働き続ければ、リスクが少ない状態でお金持ちになれる気がしますよね。

しかし、そんな単純な話ではありません。

給料は時間外勤務の割合が大きい

これは私が医者になった後に知った事です。医者の平均年収は1500万円を超えているとお話してきました。

しかし、実はその半分か、場合によっては60~70%は時間外勤務の給料となります。

意外に知られていないかもしれませんが、各病院のホームページに実は医者募集のページが設けられていることが多いです。

その中に、年収などの条件を書いている病院が時々あります。

もちろん、要相談という記載も多いのですが、例えば、基本月給45万円~ など記載されていると、役職に応じて月収が45万円以上であることがわかります。

しかし、これを12倍しても500~600万円程度の年収になり、1500万円にはとどきません。実は残りの1000万円こそが時間外勤務で得られる給料なのです!

要するに、高給取りであることと引き換えに、働かなければいけない時間が普通のサラリーマンの比ではありません。

数多くの時間を犠牲にし、給料としているのです。

職場が一定しない

医師免許があれば医者として全国どこでも働けます。しかし、同じ病院に30年間継続して努める人はまずいません。

なぜなら、自分のスキルを上げるには、勤め先の病院をいくつか転勤して複数の病院で勤務し、その時までと違うやり方や人との繋がりを作る必要があるからです。

また、ずっと市中病院に居られるわけでもなく、大学病院で勤務しなければならなかったりと給料が一定の水準で安定しません。

更に、退職金においては、基本は長年勤めれば勤めるほど上がりますが、転勤が多い医者は相対的に退職金が少なくなります。

現役世代は意外とこのことに気づかず、給料をあるだけ使ってしまい、貯蓄できない人も数多くいます。

額面と手取りは大きく異なる

医者の年収が語られる際にいつも忘れがちな点です。

年収において、『手取り』と『額面』はなぜか切り離されて考えられているため、『額面』の数字のみが独り歩きし、医者の年収が非常に高く感じる人が多くいらっしゃいます。

しかし、税金で差し引かれた手取りは額面よりかなり少なくなります。

それは日本には『累進課税制度』という制度があるからです。

詳細は割愛しますが、要するに『給料が増えればその分納めなければいけない税金の『割合』が増える仕組み』のことです。

仮に、給与明細に記載されている額面での年収が1500万円だとしましょう。それは当然、全額手取りになりません。

医療費控除や保険料での控除などの所得控除などもありますが、わずかな額です。

よって、通常の勤務医の場合、額面給与の殆どが課税所得となり、そこから所得税として33%引かれますので、いきなり手取り年収が1000万円です。

更にそこに住民税などがかかってきます。その場合、全体の40%程度が税金として徴収され、結局手取り年収は800万円~900万円になります。

いきなり高給取りの雰囲気を感じられなくなったのでは無いでしょうか?

累進課税制度そのものに問題があるわけでは無いと思います。

『大きく稼ぐ人は大きく納税しなければならない。』

日本人は皆、公共設備や医療機関受診など、子供の頃からその恩恵を受けて育っています。

稼ぐようになればその分、税金を納めなければなりません。

問題は

それ以外の制度

にあると思っています。

例えば配偶者控除

配偶者控除及び配偶者特別控除は、課税所得が1000万円を超えると適用外となり、1円ももらえません。ちなみにこの財源は皆が支払っている税金です。

例えば、児童手当

子供が生まれた後に申請すると基本は0歳から月に15,000円が給付されます。3歳以降、年齢が上がるごとに少しずつ給付金額は下がりますが、中学生でも月に10000円の給付があります。

ただし、ここには高所得者に対する例外があります。約960万円以上の世帯収入があれば月に5,000円までしかもらえません。

そしてこの財源も税金です。

 

また、幼稚園無償化というお話があります。

こちらは3歳以上では所得制限なしです。しかし、0~2歳の場合、所得制限があります。

住民税非課税で250万円以下と厳しい条件にはなりますが、所得制限は所得制限です。これも税金で賄われます。

まとめますと、1500万円の年収がある勤務医は40~45%程度の

約600万円

が色々な税金として引かれ、しかも他の方が受けられる給付金や無償化の恩恵は全く無いか、額が大きく減らされるということです。

つまり、人より高いお金を支払っているのに受けられるサービスは他の人以下です。

例えるならレストランに行って、高い料金を払ったのに、食べられる料理のグレードは安い料金しか払っていない人の料理のグレード以下ということです。

さらに、33~40%も引かれる税金は文字通り、『医者が命を削って稼いだお金』を徴収しています。

また例を出しますが、医者の当直中の時間給が5000円であると仮定します。

仮に夜間から朝まで8時間寝ずに働いたとします。

そうすると夜間の勤務収入は40000円の収入になります。しかし、税金で40%近く差し引かれると24000円しか残りません。

正しい睡眠が医学部合格につながる!?勉強が捗る睡眠方法とは!

の中で『睡眠時間を削ることは命を削る事』と言いました。

つまり、『命と睡眠』を削って働いた8時間の内、3時間以上の時間は自分には1円も入らないのです。

医者の給料は額面が非常に高く、税金を払ったとしても十分生活できる額はもらえます。

ですが、命を削って稼いだ額面年収1500万円も、その多くが税金で徴収されます。

実際のお小遣いは毎月飲み会に行ける数万円程度でいわゆる高給取りの生活にはなっていない家庭も多いです。

お金の多寡を問題としたいわけではありません。

高収入を期待して医者になっても、理想と現実にはかなら差があります。

それでも『高収入』を理由にして医者になりたいですか?

次の記事では実際の給料を公開します