こんにちは!Dr ニーアです。

本日は睡眠と学習効果についてお話します。

医者を目指している人は寝る間を惜しんで勉強している人が多いのではないでしょうか?

私が学生の時も、睡眠時間を削って勉強していました。

しかし、結論から言いますと

これは絶対にダメです!!

睡眠時間を削って学習に当てても思ったような成果は得られないということに関しては多くの事がわかってきています。

では、どのように睡眠をとって学習に当てると効率よく学習できるのでしょうか?

学習効果と睡眠

私は医学部に入る前の学生生活での睡眠時間が4~5時間程度ということもしばしばありました。

6時間寝たら寝すぎたと焦る事さえありました。

しかし、今やその認識は間違いです。

8時間睡眠と比較し、4時間、6時間の睡眠時間における脳の働きを調べた研究があります。

4時間睡眠ではもちろんのこと、6時間睡眠でさえも、集中力、物事に取り組む力、認知、学習能力はいずれも低下します。

6時間睡眠ですら不十分で集中力を低下させうるのです。

また『14日間継続した6時間睡眠は2日徹夜した状態に近い』という衝撃的な報告もされています。

2日の徹夜状態では正常な思考能力や判断力を維持することは困難であり、そんな状態で集中して勉強するなど不可能です。

私は6時間未満の睡眠では毎日の学校での授業に全く耐えられず、集中できない時間があり、それを取り戻すため、必死に夜間に勉強しなければならないといういわば本当に悪いサイクルに入っていました。

6時間睡眠ですませると明らかに学習効率が落ちることは、医学部を目指している人、そのご家族の方、また、医者になった人でもどうか注意してください。

睡眠負債

『寝だめ』をするから大丈夫

そういうお話を聞いたことはありませんか?

確かに、睡眠時間を長時間確保した後はスッキリ爽やかで、人によっては次の日の睡眠時間が2時間でも平気だという人もいるでしょう。

そして、数日寝不足状態が継続して寝不足を徐々に自覚し、また長時間寝ることで『寝だめ』をする。

そのように睡眠を繰り返している人もいます。

わかりやすく言うと、長時間寝て睡眠時間の貯金を作り、その貯金でしばらく短時間睡眠でも乗り切るという考え方です。

しかし、生理的には『寝だめ』というものはありません。

実は、睡眠不足の借金を連日積み重ね、それを長時間の睡眠で一部返済し、また短時間睡眠で借金を作っているのです。

これは1990年代にアメリカで提唱された『睡眠負債』という言葉で表されます。

『睡眠負債』とは、

「人間というものはある一定の睡眠時間が必須で、その定められた睡眠時間より短い睡眠では、不足分が眠りの借金として生じる」

という考え方です。

私が最も恐ろしいと思うことはこの借金は『知らず知らず』のうちに蓄積され、その結果として身体や心に機能不全を生じることです。

脳機能は

2晩徹夜の状態=6時間の睡眠を連日継続した状態

ということがわかっています。

しかし、最も問題なのは2晩徹夜は明らかに睡眠を欲する状態に陥るのに対して、

6時間睡眠では『眠気を感じにくい状態で脳機能が低下している』ことです。

これは、疲れを感じにくい状態で無理を続けて睡眠負債が増えていく事、そして、集中していると思っていても、わからない範囲で脳機能が低下しており、効率の低下や何らかのミスをしやすくなるという事になります。

できていると思っても、実はしっかり寝た方が効率としては良いのです。

ちなみに、いわゆる『寝だめ』を週末に行ってしまうと、月曜日の朝に起きるのが辛くなります。これは1週間の最初が憂鬱である理由の一つともいわれます。

睡眠と生命予後

毎日の6時間睡眠では日常生活及び、学習などの集中が必要な活動の効率が低下する事はわかって頂けたと思います。

さて、睡眠時間が短くなることでの身体と心への長期的な影響はどうでしょうか?

Sleep Reviewに症例報告として紹介されている、
Short Sleepers Four Times More Likely to Catch Coldsでは睡眠時間と風邪ウイルスの定着率を調べています。

7時間以上の睡眠時間を取る人と比較すると6時間未満の人は4.2倍風邪にかかりやすく、5時間未満の人では4.5倍にもなることが分かりました。

これは読み替えると風邪の引きやすさは6時間未満の睡眠であれば5時間未満の睡眠とあまり変わらないということです。

Daniel F. Kripke 医師が2002年に発表したMortality associated with sleep duration and insomnia. において110万人という膨大な人数を対象とし、睡眠時間と死亡率の関係を調べています。

睡眠時間が7時間(6.5時間以上7.5時間未満)の人は最も死亡率が低い。一方で、6時間未満、もしくは8時間以上の睡眠時間の人は死亡率が相対的に高くなるという結果でした。

日本でも同様の研究があり10万人を対象とした追跡調査があります。

睡眠時間が7時間(6.5時間以上7.5時間未満)の人たちで死亡率がいちばん低く、睡眠時間がそれより短くても長くても死亡リスクが増加していくという結果でした。

短すぎるのは絶対にダメですが、ただただ長く睡眠をとれば良いというわけでもないようです。

長すぎる睡眠時間がなぜ死亡率を上昇させているかは不明ですが、現状では7時間(6.5時間以上7.5時間未満)が良いようです。

次は医者である私が現在行っている睡眠方法についてお教えします。