こんにちは!Dr ニーアです。

前回、各大学と医師国家試験合格率についてお話しました。

その中で医師国家試験合格率ダントツ1位の自治医科大学についてお話したいと思います。

皆様は自治医科大学って聞いたことありますか?

もしかすると非医療者の皆様はあまり聞きなれないかもしれません。

今回はそんな自治医科大学について以下、お話していきます
①自治医科大学とは
②自治医科大学の学費
③自治医科大学卒業後の勤務
④なぜ医師国家試験合格率が高いのか?
⑤自治医科大学に入るには

①自治医科大学とは
自治医科大学は全国の都道府県が共同設立(費用を出し合って)してできた大学です。以下、ホームページにミッションという名で自治医科大学の目的が掲げられています。

1.地域医療、および地域の医療/保健/福祉ネットワークの構築とその維持に貢献する医療人を育成する。
2.医療難民を作らない地域医療提供体制への研究/提言/支援を行う。
3.医療/健康に貢献する研究を推進する。
(自治医科大学ホームページより転載)

この中で最も切実な目的とは『地域住民の福祉増進を図ることを主眼とし、へき地(過疎地域)における医療(医師)の確保』ということになります。

要するに、へき地における医師の確保及び医療水準を維持するということです。

近年、医者の地域偏在化という問題が明らかになってきておりますが、ある地域で医療を受けられないということになると、その地域は衰退していきます。

当たり前かもしれませんが、例えば病院にかかりたくても車で片道3時間行かないと病院が無いという地域に住みたい人は少数ですよね。緊急時に受診するのも大変苦労しますし。

そのような地域に医者を一定数確保することで地域医療、さらには地域の生活維持や活性化を目的としているという事になります。

さて、自治医科大学はどうやってへき地の医者を確保しているのでしょうか。

そこには学費と卒業後の働き方がポイントとなります。

②自治医科大学の学費

医学部(医大)の学費については前にお話しました通り、非常に高額です。しかし、自治医科大学はなんど学費がかかりません!

といっても、無条件で無料というわけではなく、適切な条件を満たせば実質無料となるという事です。

まず、入学者は全員、学費を『修学資金貸与制度』という名目で自治医科大学から借りる契約を結びます。

要するに、返還義務のある奨学金制度です。

この制度により、学生の間は入学金や授業料は一切支払う必要はありません。

尚、入学金や授業料は普通に支払う(返還すると)とどれくらいかかるかもホームページに記載がありますが、概算で2300万円程度かかり、私立大学並みとなります。

そして、この制度で無料になる条件が卒業後の勤務に関わります。
③自治医科大学卒業後

上記、②でお話した修学資金は

指定する公立病院等に医師として勤務し、その勤務期間が修学資金の貸与を受けた期間の2分の3(1.5倍)に相当する期間に達した場合は返還が免除されるとあります。

医学部医学科は最短で6年間ですから、最低9年間の勤務で全額免除となります。初期臨床研修を除けば実質7年間ですね。

なお、この勤務が達成できない場合、前述の2300万円の返還義務が生じます。

要するに、地域医療を支える医師の育成目的に費用が捻出され、その費用を返す必要が無いかわりに地域医療に従事するという仕組みとなっているのです。

④なぜ医師国家試験合格率が高いのか?

自治医科大学ホームページにも医師国家試験7年間(第97~103回)連続1位の合格率と記載があります。

公表されているように自治医科大学は毎年100%近い合格率がありますが、同級生の自治医科大学に行った人間によると、医師国家試験のために非常に手厚く指導され、合格は至上命題になっているようです。

それは、①~③を読んでいただければおわかり頂けると思いますが、国家試験に不合格となり、1年間医者になるのが遅れると地域へ1年間1人分の医者がいなくなるということに直結するからです。

ある県からの生徒が2年連続で不合格となったとき、県の担当者が自治医科大学に事情説明を求めに行かれたというお話があります。2年間地域医療に従事する人がその間減るわけですから、まさに死活問題です。

意外かもしれませんが、医師国家試験に対する予備校があります。

自治医科大学はその予備校の講師陣に非常に手厚いバックアップを依頼し、生徒のケアにあたっています。また、受験の際も精神的なケアや、学習条件を高める工夫をしながら全員合格を目標にしております。

尚、私の所属していた国立大学にはそのようなバックアップは殆どありませんでした。精々、予備校の通信授業を各自負担で受けろとか、予備校講師の講演会でしたね。

その分、自治医科大学の生徒にかかるプレッシャーも非常に大きくなります。

なんせ合格率100%を目指されているわけですからね。

ただ、前も書きましたが、普通にやっていれば合格します。強いて言えば、受験の際の体調を整えておくことは必須になりますが。

⑤自治医科大学に入るには
自治医科大学は前述の通り、返還義務はありますが、授業料が実質無料となると言う事もあって、受験者数は多く、合格倍率は15~20倍程度という高倍率になっています。

入試は、2019年現在、学力試験は数学、英語、理科ですが、かなり難関であり、偏差値としては概ね60後半となります。

また、自治医科大学の特殊性として各都道府県毎の合格者数が分けられていますので、所謂、競争は同じ都道府県内の学生が対象となります。

適切な勤務を果たせば、学費が実質無料になる自治医科大学も選択肢の一つとして検討すべき大学となるかもしれませんね。