こんにちは!Dr ニーアです。
入る医学部(医科大学)を選ぶ際に卒業後を見据えて決めなければならないのでしょうか?
時々、こんな事を書いているネット記事があります
『卒業後の進路が限定されてしまうため、入る大学はこだわらないといけない』
結論から申しますと、半分正解であり、半分間違いです
それはなぜでしょうか?
さて、少しだけ昔の話です
『無医大県解消構想』、もしくは『一県一医大構想』という言葉をご存知ですか?
これは1973年に当時医学部のなかった15県において医学部(医科大学)を新設する構想で、1982年に医学部定員の抑制策が決定されるまで、医学部定員は増加し続けました。
要するに、
どの県にも医学部を設置し、一定の医療水準を維持する
とともに、
医者数を増やし、医者不足を解消しようという
試みがありました。
さて、それが卒業後の進路とどのように関わるのかですが、
実は医学部の強さ(学閥や医局を含む)は歴史の長さが関係していることが多く、
旧帝大と言われる東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、九州大学、北海道大学、名古屋大学の7大学は歴史が長く、また、医学部としての力が強いと言われます。
一方で、旭川医科大学、山形大学、愛媛大学、筑波大学から琉球大学に至るまでの『一県一医大構想』に含まれる医学部は歴史が浅く、力は強くないと言われます。
昔の情報では、出身大学によって一生が左右されるため、無理をしてでも卒後を見据えて大学を選ばなければならない、という考え方が根強かったのです。
それは、卒業後は殆どの人間が出身大学の医局に入ることが前提であったからです。
実際に、私は出身地ではない大学に入学し、両親や知り合いからは、大学からは戻ってこないと思われていました。
確かに一昔前は、出身大学に入局することで、他の地域で働く事は難しい時代がありました。
しかし、現在、臨床研修制度などの制度変更に伴って昔ほどの出身大学に強く左右される部分は減ってきています。
ただし、現在、旧帝大の教授はその大学出身者が殆どですし、新設医大の教授も旧帝大の出身者が多くいます。
そのような意味で、教授やそれに次ぐ役職を目指すうえでは、旧帝大出身者の方がメリットはあると言えます。
また、旧帝大は昔からの積み上げにより基礎研究の土台があることや、海外の留学などにおいても一定のネットワークを構築しています。
色々なご意見があることは承知の上でお話すると、
『大学で教授を目指す場合、大学の選択は重要であり、また、研究や留学において旧帝大の方が土台がしっかりしていると言えます。しかし、一臨床医として働く場合、個人の人間性や能力に左右される』
と思います。
実際に、私は出身大学とは関係ない大学院と繋がりがありますし、現在の勤務地は単一の大学出身者のみならず、色々な大学の出身者が協力して医療を行っています。
一昔前のようにある大学のみの医局員がある病院を占めているという構図はやや減ってきています。
医者を目指している人にお伝えしたいこととして、余程強いこだわりがないのであれば、どこの大学にもそれぞれの特徴があり、自身の実力と入試の難易度を照らし合わせ、志望する医学部を目指すことをお勧めします。
もちろん、6年間も過ごし、人との繋がりもできますので、どこの大学に行くかでそ人生は変わりますが、卒業する時にどのような進路を考え、選択するかの方がずっと大事だと思います。
出身大学に拘っていつまでも医学部に入れない方がずっと損です。それは断言できますので、これから医学部を考えている人は是非参考にして頂ければと思います。